赤ちゃんの鼻がつまってよく眠らない、ミルクの飲みが悪い、機嫌が悪いというのは
 外来でよく聞くお母さんの訴えで珍しいことではありません。その手当てとして何より
 も鼻かぜや寒冷などの原因を除くことが必要ですが、鼻づまりそのものに対してはな
 かなか決め手はなさそうです。小児科でも耳鼻科で使う点鼻薬(血管収縮剤)を一
 時乳児に使用したこともありましたが、量を間違えると傾眠傾向がでたり、ひどいと痙
 攣を起こしたりした例もあり2歳以下の児には使ってはいけないことになりました。また
 民間療法に鼻腔にオイルを塗る発想があり、時に行われていることもありますがこれ
 も気管にオイルが流れ込むと異物による肺炎を引き起こすことがあり、要注意です。
 原則としてはやはり鼻汁を吸引することですが、家庭で行う際のスポイトや(薬局で売
 っている)吸引器の使用時は鼻粘膜を傷つけないように気をつけることが必要です。
 以前は、お母さん方に鼻孔に口を当てて吸い出すように指導していましたが、このた
 め、お母さん方に風邪がうつるということもあり最近ではあまりやられなくなったようで
 す。赤ちゃんの鼻腔は狭いので、つまりやすいのは当たり前くらいに考えあまり神経
 質にならない方がいいかもしれません。なお、冬ならば室内の温度と湿度を高める
 のもいいし、ガーゼを湯に浸して鼻に当てると(目には当てないように)効果がある場
 合もあります。
      
  小児科の外来で一番多い訴えが発熱です。40℃以上の発熱があると、頭がおかしく
  なるのではと不安になる家族の方も多いのですが、一般に痙攣や意識障害、呼吸困
  難などがなければ、まず頭がやられていることはありません。熱が高くても比較的元気
 で あれば、熱は生体の防御反応の1つくらいに考えて慌てないことが大切です。家族
  が慌てると子供も不安になってしまいます。
  熱の上がり始めは震えて寒がることが多いので、こういう時は部屋も暖かくし、厚着さ
  せたり、布団を多めに掛けたりします。その後、熱が上がり切ると、体全体が熱くなり、
  本人も暑がりますので嫌がらなければ水枕や氷枕で頭冷やしてあげます。頭だけでは
  効果が少ないので、時に濡れタオルで脇の下や首を冷やしてあげると効果があること
  があります。
  熱が高くて元気がなく水分の摂取もうまくいかない時は解熱剤の使用もかまいませ
  んが小児に使用して安全なアセトアミノフェン、イブプロフェンを必要最小限で投与しま
  す。安全と言われていても連用では副作用の出る可能性があります。また、熱は平熱
  まで下げる必要はありませんし、解熱剤は熱の原因となる風邪などの感染症を治
  す薬ではないということもよく知っておかなければなりません。長く続く発熱は原因の
  検索とその治療が一番大切です。
  
  生後6ヵ月から6歳くらいの乳幼児に多い、38℃以上の発熱に伴って起こる痙攣の
  ことをいいます。ほとんどの熱性痙攣は数分以内におさまり、神経学的な後遺症を残す
  ことはありません。痙攣が起こったら衣服をゆるめて楽にし、嘔吐が見られるときは嘔
  吐物が気管に入らないように横臥位または腹臥位にします。舌を噛む事はありません
  ので、口の中に物を入れるのは口腔内を傷つける可能性があるだけですので絶
  対にやらないで下さい。 熱性痙攣を起こしやすい子は痙攣止めの座薬を発熱時に予
  防的に使用したり、解熱剤を早目に投与したりすることもあります。
   10分以上痙攣が続いたり、1日のうちに何回も痙攣を起こしたりする場合は救急車を
  呼んでかまいません。また、稀に無熱性の痙攣に移行することがありますが、こういう
  時多くは脳波やMRIなどの検査が必要になりますので医師と御相談下さい。
   
     慢性的、発作的に気管支が狭くなり、喘鳴や呼吸困難を繰り返す疾患です。小児喘
 息のほとんどはダニ、カビ、ホコリなどに対するアレルギーが原因ですが、誘引あるい
 は増悪因子としてタバコや稲わら焼き、花火などの煙、気候の変化、運動、精神的スト
 レスなどが挙げられます。
 治療には環境の整備、鍛錬、薬物投与が必要ですが、気管支喘息は気管支の慢性
 炎症と言われており、治療に数年要することも珍しくありません。軽症の人は発作時に
 吸入や気管支拡張剤の短期間の投与などの対症療法だけでいいこともありますが、
 一般的には喘鳴が消えてもまだ、気管支の炎症は残っており、わずかな刺激で、また
 発作がでることが多いので、症状がなくても薬物療法を続ける例が多くみられます。
  薬を長期に投与することに抵抗のある方もいると思いますが、発作を繰り返している
 と気管支が硬くなり、大人になっても喘息が治りにくくなります。症例により、薬物の量、
 投与期間は様々ですが、要はあせらずに気長に喘息の治療を続けていくことです。
 小児の喘息はきちんと治療していれば中学生位までに70%は治ります。
  なお、喘息の発作時にチアノーゼや意識障害がみられるときは緊急の治療が必要
 ですのですぐに医療機関に受診して下さい。
      
    小児は大人と比べて体全体における重量の比率が大きく、また、平衡感覚、運動神、
 経筋力が未発達のため、よく転倒したり落下したりして頭部を打ち、小児科救急を受診
 するケースが多くみられます。その際の精査や入院が必要かどうかの判断は時に難し
 いものがありますが、頭部打撲の原則について述べてみます。
 受傷直後より来院まで意識障害や嘔吐を認めず、顔色も良好で神経学的な異常がなけ
 れば多くの場合、検査は不要です。
 意識障害、神経学的異常がなく嘔吐が見られる場合、a)嘔吐回数が3〜4回以下の場合
 (多くの症例で1時間前後の睡眠後の嘔吐)は自家中毒様の病態(頭部打撲時、出血や
 脳挫傷がなくとも、頭の中の嘔吐中枢というところが刺激されて吐くことがよくあります。)
 と考えられますので輸液して1〜2時間の経過観察を行います。
 b)頻回の嘔吐、神経学的な異常の出現、輸液にても嘔吐が消失しない場合はCT検査
 が必要です。
  意識障害や痙攣を認める場合は直ちに脳外科医の診察が必要です。痙攣重積、呼吸
 停止など重篤な症状へ急変しやすく、救急車による移送にも医師、看護婦の同乗が望
 まれます。
 その他、皮膚軟部血腫(こぶ)は放置してかまいませんが、裂創のある場合は縫合が必
 要です。こぶに弾力性や陥没を認める場合は頭蓋骨骨折の可能性があり、X線撮影が
 必要です。
 外来診察で軽症と判断され帰宅した場合でも顔色不良、嘔吐、痙攣などが出現した時は
 再受診・再検査が必要です。また、何もなくとも、受傷後24〜48時間は安静にして 注意
 深く観察することが大切です。
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